
中辺路の家
種別/リノベーション
所在地/和歌山県田辺市
構造/木造平屋建
延床面積/113.41㎡・LOFT 9.94㎡
竣工年/2025年
Photo/Koki Matsumoto
植物と共に暮らす、インナーテラスのある住まい
見晴らしの良い高台に立地する、築38年の平屋の住まい。
予期せず受け継いだ建物だったこと、使用上の不便に思うことの積み重なりから、ご夫婦は当初建替えを検討されていました。
ですが、詳細な調査の結果、構造面で十分活用可能であると判断するに至り、建物の特徴を最大限活かすリノベーションをご提案しました。建替えかリノベーションか、どちらにも良さがありますが、経済合理性の先にある新たな価値を生みだすことができるかがポイントになると考えました。
具体的には、設備スペースとして不整形に屋外化されていた所を屋内へ取り組むこと、そして玄関を屋根形状に沿うよう増築し動線をシンプルにすることで必要十分な床面積を確保し、建物を整型に整えながら耐震補強を図っています。
加えて、外壁、屋根についてはカバー工法とすることで、撤去費用を抑えつつ、断熱性・耐久性を高める性能向上に寄与しています。
又、屋内についてはスケルトン化を図った上で、ご家族のライフスタイルに合った間取り構成へと再編集しています。その中で、立体的な広がりを生む、勾配天井やロフト、そして、特徴的なインナーテラスを計画。
植物の住まいであるインナーテラスは、屋外とリビングの間に設ける事で、南側擁壁からの視覚的な距離を確保しながら、2重サッシとして室内環境を整えることを意図しています。
そして、内装は多種多様な素材がインテリアに溶け込み、暮らしのちょっとしたアクセントとなっています。直感的でありながら、計算されているかのようで、ご夫婦のセンスの良さが随所に現れています。
打ち合わせの中で、趣味である塊根植物を教えて頂いたのですが、命を感じさせる不思議なかたちと、季節によってはパタッと落葉して、春に突然芽吹く気まぐれな生き方が魅力的で、なんだか人間っぽさすら感じるんです。
そういった魅力がご家族の暮らしに自然と溶け込んだら素敵だなと、植物を眺めながら熟慮を重ね計画した住まいです。

屋根勾配なりに増築した、陰影が印象的な玄関土間。

玄関土間にはシューズクロークを設けています。

靴を選ぶことを楽しむ、単なる納戸ではないスペースとなりました。

アール開口の先はLDKへと続きます。

リビング全景の様子。キッチンの腰壁はモルタル調の左官仕上げ。

内部は一旦スケルトンにした上で間取りを再編集しています。

屋根に沿うように計画した勾配天井。
高すぎず低すぎず、空調効率も踏まえて計画しています。

現れた既存の梁がインテリアに溶け込むよう照明計画に組み込みました。

梁組から必要となる独立柱も、程良いアクセント。

キッチンに立つとインナーテラスまで一望できる。

キッチン背面には、特注のカップボードを計画。
正面の壁はマグネットが付けられるよう下地に工夫をしています。

インナーテラスは2本の独立柱を組み込み、大きなガラス面を構成。

円形の伸長式のダイニングテーブル、大型ソファーを設けて丁度良い広さ。

擁壁との間に設けたインナーテラス。
床にはヘキサゴンタイルを敷き詰めて、外部が屋内に取り込まれた印象。

たくさんの植物たちが、屋外とのつなぎ役となる。

リビングに面する3枚引き戸は完全に引き込むことができます。

その先は主寝室。子供たちが巣立った将来を見据えてリビングと連続するよう計画しています。

多種多様な植物がいたるところに。

寝室も勾配天井とし、その先にロフトを設けています。

可動梯子を用いて登ります。

ロフトはちょっとした書斎のような、籠れる居場所。
勾配天井から更に一段天井を上げ、十分な天井高を確保しています。

水回りへの動線も、小さなホールを設けることでゆったりとした印象に。

籠り感のある落ち着いた印象のトイレ。

洗濯物も十分に干せるスペースを確保した、洗面脱衣室。

シームレスな人工大理石を用いた洗面台。
テキスタイルの延長のようなタイルが印象的です。

洗面台の隣には大容量のWIC。
脱衣室~WIC~キッチンへと家事動線に配慮した回遊動線としています。


それぞれの子供部屋は、リビングから繋がるよう動線を計画。
椅子の下で就寝中のモルモットがとっても可愛い。

外観は極力シンプルに。
玄関を増築し、駐車場側に向きを変更しています。
外壁、屋根共にカバー工法を採用。

外構工事によって駐車場から庭を囲むようにくるっと回るアプローチが設けられました。

植物の成長と共に、成熟した住まいとなるのが楽しみです。
BEFORE