法連町の家
種別/リノベーション
所在地/奈良県奈良市
構造/木造2階建
延床面積/90.01㎡
竣工年/2019年
Photo/Koki Matsumoto
のびのびと住み継ぐ
不動産コンサルティングから始りました本計画。
希望の奈良市中心部は当然に坪単価が高く、当初は難航しましたが「リノベーションならではのメリット」を活かすべくじっくりと腰を据え、運命的に出会ったのがこちらの建物でした。
都市計画の更新によって既存不適格に該当し、もし建替えを行うと建坪が小さくなってしまうという条件に加えて、複雑な増改築や長期間に渡る空き家期間、床下の不具合もあるという一般的な物差しではハードルの高さばかり目立つもの。
ですが、「全面改修にて住み継いでいく」ことを前提とするならば、立地環境含め総合的に考えるとデメリットを上回る大幅なメリットがあると判断しました。
そのため、リノベーションでは上記諸条件を勘案し、基礎からやりかえした上で、耐震補強、屋根や外壁の更新等、長期的視点に立って必要な工事を優先して行っています。そして、耐震補強に伴う耐力壁が必然性を生み、一階は袖壁間に諸機能を配置した一室空間というシンプルな空間構成となっています。
必要最小限のデザインは、コンパクトでありながらも、例えば大人数が集まった際には階段がベンチになるなど、柔軟な発想で住みこなす事を可能としています。
一方、内部については使える建材類は積極的に活用し、DIY工事を行うなど限られたコスト内でメリハリを付けた改修を心掛けました。
工事に参加し補修知識を得た事もあり、子ども達は無垢の床に傷を刻み、柱に身長を書き込んだりと、気兼ねなくのびのびと過ごしており、そんな大らかさがこちらの住まいの良さだと訪れる度に感じます。
建物に出会った時に直感的に思い浮かんだ「一本の線でつながるような感覚」を大切に、丁寧に物語を紡いだ計画です。
東側外観。
路地奥の行き止まりに立地する静かな住環境。
駐車スペースに配慮し、テラス窓から腰窓に更新した木製建具が柔らかな印象で出迎えます。
屋根は瓦屋根からガルバリウム鋼板葺きへ更新し、軽量化を図っています。外壁はモルタル下地の塗装仕上げとし、西側の元増築部はカバー工法によるサイディング貼と適材適所に工法を選定。
オーダーの木製玄関引き戸。モルタル仕上げのポーチは車止めを兼ねています。
シューズクロークを設けた玄関ホール。
玄関引き戸上部の欄間ガラスとリビングからの光によって十分な明るさを確保しています。
ガラス入り引き戸を介してLDKへ続く。
耐震補強による耐力壁の間にソファーやキッチン、収納など固定物を配置したシンプルな構成のLDK
床材は足ざわりが心地良い杉材のフローリングを採用しています。
リビングからダイニング方向を見る。2階につながる軽快な力桁階段は新たに架け替えた。
奥の建具を引き込むと西側までつながる一室空間。心地よい風が通り抜ける。
南側は隣家との境界が狭く採光を期待することはできないため、下屋根にトップライトを設けています。
トップライトは木枠を組んで網入りガラスを嵌めた。
見上げると外壁の先に今日の天気を知ることができる。
袖壁間に設けたリビング収納。現在は子供たちのおもちゃと学習用具でいっぱい。
家電や食器類もすべておさまる3.5mを超える横長の造作キッチン。
ダイニングテーブルも時に作業台を兼ねるなど、限られたスペースを機能的に使う。
ダイニングからリビングを見る。
エアコンは天井付の2方向吹き出しタイプで細長い空間を効率良く空調する。
和室の建具を引き込んだ状態。こちらの和室は1段上がった元増築部分にあたります。
和紙畳とDIY左官仕上による和室。既存再利用のアルミサッシの先は裏庭へと繋がります。
白を基調とすることですっきりとした印象の水廻り。
トイレは階高の低さもあり、梁がちらっと顔を出す。
階段は圧迫感なく、程よく視線を遮る。
大人数が集まる時は、丁度良いベンチにもなります。
階段からの見下ろし。リノベーションからもうすぐ5年を迎える年季の入った床材は子供達がもう少し成長したら全体的に磨く予定。
低めに設けた吊戸とキッチンの引き出し内に食器類はすべて収納。キッチンにはゴミ箱も組み込みこんでいる。
階段を上がると左右に子供部屋が2部屋。古建具の内窓を設け、風が通るように計画しています。
子供部屋の床材は、以前住んでいた賃貸住宅に入居の際に敷いた西粟倉村のパーケットフローリング。表面を自分たちで磨いた上で再利用しているので、すでに12年選手。
元増築部分の2階にあたる主寝室。こちらの壁も自分たちで施工した。真壁を活かすべく、元増築部分は外部より耐震補強を行っています。
BEFORE