紀の川のコートハウス
種別/リノベーション
所在地/和歌山県紀の川市
構造/木造平屋建
延床面積/157.50㎡
竣工年/2020年
Photo/Koki Matsumoto
増築を経た住まいを一つの物語へ再編集
なだらかな傾斜地に建つ2棟の建物。
現況は、瓦葺きの古民家に対して、中庭を取り囲むように離れと渡り廊下が増築されていました。
築年数が異なるためか、建物の印象はチグハグ。
そして、調査を進めると経年劣化や耐震性の不足と共に、問題を隠すかのように当時の改修が行われていた事が判明しました。
それぞれの建物の特徴を活かしながら、いかに諸問題を解決するか。
活用されていない中庭をより活かす事はできないか、を考え計画を進めました。
具体的には、古民家部分については、屋根材を軽量化すると共に、問題点を解決しながら全体的に耐震補強(紀の川市の耐震補強助成事業を活用)を行っています。そして、屋根を外断熱とすることで特徴的な小屋組を現す空間とし、個室と共に将来的なセカンドリビングとなるスペースを計画しています。
又、増築部のLDKについては、こちらも耐震補強を行いながら、特徴的な2重に架かる梁を合成梁とする事で、大きなスパンを確保した広々とした一室空間としました。
加えて、古民家部分と離れ、そして水回りを繋ぐ屋外ウッドデッキを計画。
屋内の渡り廊下だけでなく、屋外でもそれぞれの棟を繋ぎながら中庭に繋がる動線を設けました。
お子様が屋内外問わず元気に駆け回る様子が印象的で、“物語の続き”が楽しみな住まいとなりました。
2棟は当初ばらばらだった印象でしたが、屋根材を更新するなど一体的なファサードとなるよう再編集しています。
掘込み駐車場を建物と一体化した端正な外観。
玄関までの長さを活かし、新たに緩やかなスロープを設けています。
玄関土間からホールを望む。
写真左手のシューズクロークによって、玄関はすっきりと。
オーク材のハギ板で制作した片引き戸の先にLDKが続きます。
LDKにはプライベートな中庭からの暖かな光が差し込む。
キッチン、和室、居間と細切れだったスペースを一室に。
加えて、キッチン奥に納戸スペースを設ける事で室内はすっきりと。
天井の高低差が、落ち着きと開放感のコントラストを際立出せます。
キッチン前の収納と背面のカップボードは、オーク材を用いた造作家具にて制作。
キッチンからリビングダイニングを望む。
中庭からの光が冬場は室内奥まで届くためポカポカと暖かい。
キッチン横の畳スペースはお子さんたちの遊び場や勉強スペース、
そして横になって寛ぐ場所として。
造作で作った長いテレビ台は、畳スペースではデスクとして使えるように計画。
そのため、床も蓋を開ければ掘りごたつ状となるよう加工しています。
リビングダイニングの照明は、間接照明のみで夜間も十分な明るさを確保しています。
経年変化を経たオーク材の無垢フローリング。
元は洗面脱衣室だったスペースをトイレに。
そのため、ゆったりとしたスペースが確保できました。
洗面台は横に2つ並べて家族みんなで使えるように。
洗面脱衣室の奥には元玄関だった所にランドリースペースを設けることですっきりと。
離れは屋根を外断熱に更新し、和室二間だったスペースを引込み建具で仕切れるように。
プライベートな中庭には敷地の高低差を活かし、階段状にウッドデッキを計画。
母屋と増築部、そして水回りをつなぐ屋外動線として、舞台のようなウッドデッキが日常使いに大活躍しています。
BEFORE