先日、建築家の内藤廣氏の展覧会「赤鬼と青鬼の果てしなき戦い」を拝見させていただきました。

会場は、内藤氏が手掛けられた紀の川市にある株式会社丸和様の新社屋と保育棟でして、
現場への道すがら、何ができるのかなぁ~と気にかけていた建築でした。

展示内容は、赤鬼、青鬼と題した自身の内なる対話による解説と共に、模型と詳細な図面の展示による充実した構成でして、何より実物の建築を見ながら詳細図が確認できるとあって、時間を忘れて展示に見入ってしまいました。
そして、帽子を斜めに被ったような愛らしい屋根形状の保育棟をぼんやりと眺めていると、たまたまいらっしゃった施主様からお声掛け頂きました。


建築を依頼するに至ったエピソードをユーモラスを交えてお話いただきながら、
「政治的権力によって建築が建てられている現状への疑問」
「今後和歌山に新たに建つ建築は後世に残るものをつくるべき」
「地元の若い人が活躍できる場を設けることが何より必要」
との言葉が特に印象に残りました。
確かに、美術館や展示場ではない一企業の施設において、展覧会を無料で開催するということ自体が本当に異例で、自分本位の発想では決して実現しないことですよね。

又、オフィス棟の長方形平面の3等分した中央がすべて半屋外空間と外部に開けた構成で、面積効率の追求では決して得られない豊かさを感じる建築でした。
いわゆる公共建築ではないビルディングタイプにおいて、建築を通じて社会へ向けてメッセージを発する。
静謐な空間の中に、地域の未来を見据えた確かな意思を感じました。
とても刺激を受けた展覧会であり、そして、出会いでした。
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